日本人にとっても難しい!敬語。まず理解すべきなのは?

DJW会員合同会社かぐやライゼビューロー寄稿記事

2021-11-10, 09:50

「敬語」は、日本語学習者が「難しい」と感じる最たるものです。日本語が上手なはずの日本人でも間違えることがありますので、誰にとっても難しいと言ったほうがいいでしょうか。

「ウチとソト」という表現がありますが、これを理解しないと敬語は永遠に難しいままだと思います。「ウチ」は、「自分が所属しているところ」です。例えば自分の家族、自分の会社です。「ソト」は、「ウチ」以外です。「ソト」の人と話すときは、「ウチ」の人には敬語は使いません。

今、私は自分の会社を持っていますが、会社員として働いていたころは外国人の同僚や取引相手がいて、日本語が堪能な方もたくさんいました。もちろんドイツ語圏の方も。

彼らと普段日本語で話すことには問題はなかったのですが、時々違和感を覚えることがありました。それは電話の受け答えです。

例えば、以下の会話です。

A:もしもし、山田部長はいらっしゃいますか?
B:山田部長は、今日、お休みです。明日、電話するように申し上げます。

この会話の中には、いくつか敬語の間違いがあります。電話をかけた人AとこのBに面識があれば、仕方がないと許してくれることがほとんどですが、失礼なことには変わりありません。

山田部長は、このBにとって「ウチ」の人です。まずは、これがポイントです。「ソト」の人である電話をかけた人には、山田部長に対する敬語・敬称をとって話さなくてはなりません。そのため「山田部長」は、「山田」と呼び捨てにします。

私の元同僚によると、普段、呼び捨てにできない上司を呼び捨てにすることに抵抗があったようですが、呼び捨てにできるチャンスだと教えると、それからはメキメキと電話の受け答えが上達しました。

「申し上げます」も山田部長への敬語にあたりますので、これも別の語に言い換える必要があります。「お電話させます」「お電話を差し上げるように申し伝えます」などの言い方もありますが、難しいのなら、もっとシンプルに「電話するように伝えます」でも構わないと思います。

敬語の間違いは、悪気がなくても失礼だと思われる可能性があります。「ウチとソト」を理解するだけでも、ずいぶん違ってきます。

日本の若者は日本語が母語であるにもかかわらず、正しい敬語を使いこなせるわけではありません。そのため、新入社員に敬語の使い方を教える企業も多くあります。また、インターネットでも、正しい日本語表現を調べることができます。なお、文化庁のホームページでも敬語の使い方の説明があります(日本語のみ)。

執筆者

杉江 真理子(合同会社かぐやライゼビューロー

DJWのメンバーであり、東京で小さな旅行会社を経営しているが、現在はコロナ問題の影響で開店休業状態。そのため、大学院の博士課程で日本文学を学んでいたこともあり、現在はオンラインで日本語を教えている。国語辞典『大辞林』を作った博士が恩師であり、『新明解国語辞典』を作った博士にも師事した。現在、上級者向けの日本語講座は少なく、困っている学習者をサポートしようと主に上級者を教えている。

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