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コラム(2020年11月)

DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより

日本とドイツにとってのアメリカ新大統領の意味

2020-11-12, 17:50

日本とドイツにとって、アメリカの新しい大統領が意味するものとはいったい何なのだろうか。ジョー・バイデン新大統領は既に大統領選の最中から、伝統的同盟国と再びより緊密にかつより建設的に協力関係を構築したいと宣言していた。これにより、世界規模で貿易摩擦がさらに悪化する懸念はもはやなくなったように思われる。しかしながら、新しい大統領も、またドナルド・トランプ前大統領のようにアメリカの利益を一貫して優先するであろうと思われる何故なら、アメリカは過去数年の間、基本的保護貿易主義・孤立主義の方向へ厳然と社会変革を遂げていったように思われるからであるさらに、ドナルド・トランプ氏の時には „America First“が叫ばれていたが、ジョー・バイデン氏政権が移ってからであっても、 „Made in All of America“ 謳われているのである。それどころか、民主党は基本的には人権問題を非常に重要視しているため、米中間の貿易、技術、そして地政学面での衝突は、バイデン大統領下でむしろ一層深刻な状態になる可能性すらあるのである。これにより、欧州および日本の企業が、今後より頻繁に両国間の狭間でどのように立ち位置を取るべきか苦悩することにもなり兼ねない訳である。 

確かに、ジョー・バイデン氏主導の政府には、ほぼ完全に麻痺状態となってしまった世界貿易機構の改革の促進、さらにEUとの貿易協定締結の前向きな進展が期待できるかもしれない。しかし、更なる譲歩を迫ってくることも想定されるその際にはEUはアメリカが強要してくる条件を拒否できるような立場にない。というのも、もう1つの可能性として、より緊迫した貿易面での紛争が遅くとも次の共和党大統領政権下で起こり得ることが想定されるからである。それに比較すれば、建設的な交渉過程において譲歩することの方がEUにとってはより耐えやすいものであることは間違いないであろう。 

日本とEU、またドイツにとっての中期的課題は、輸出に依存しない内需の強化と自己防衛の枠組みの構築である。9月まで政権を担っていた安倍晋三首相がドナルド・トランプ氏と最初から親密な関係を築き上げることが出来ていたことにより、日本は過去4年間に亘り便益を得ていたと言えるそれによって、ドイツに比較すれば、トランプの保護貿易主義的な脅しの標的となりにくかった。 

しかしながら、共に輸出に依存する両国にとって、今後より一層相互の緊密な協力関係を築いていくこと、そして同じように自由貿易体制に基盤を置いているカナダのような国々と共に米中両国による強大かつ支配的な政治・経済圏に対抗するバーゲニングパワー確立することが、これまで以上に重要な課題となっている。従って、独両国としては、益々チャレンジングな状況になりつつある世界的情勢備えた態勢整備着実に進めていくために、これからの貴重な時間を活用することが肝要なのである。 

 

 

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
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