DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ
サプライチェーンと資本の間で成り立つ経済的安全保障
近年、経済的安全保障をテーマにした議論が活発になっています。東京、そしてブリュッセルとベルリンの政策立案者たちの間では今や、経済安全保障がひとつの独立した政策分野として扱われるようになっています。「共通の価値観」を持ち出すだけでは、もはや十分とは言えません。先進工業国では、自国経済の将来を左右する産業をいかに支え、守っていくか、という視点がますます重要になってきています。
この点で、次の2つの「梃子」が重要になります。1つは、企業がモノやサービスを提供するためのサプライチェーンであり、もう1つは、経済安全保障と密接な関係にある産業を資金面で長期的に支える資本の存在です。
サプライチェーンが戦略的な課題に
長い間、サプライチェーンはひとえに効率性の問題だと見なされていました。安価で信頼できる調達を実現できれば、競争上の優位性を持てます。このロジックは今でも変わりません。ただし、それだけでは十分ではなくなりました。半導体、重要資源、さまざまな中間財の調達に際して、特定の供給企業や国・地域に依存することで自国経済の脆弱性が高まる可能性がないか、この点を考慮せずして意思決定を行うことがますます難しくなっています。
ドイツと日本には、共通点があります。両国とも、輸出に強みを持つ一方で、資源に乏しく、そのため代替の難しい中間財や原材料に依存せざるを得ません。こうした共通の前提こそが、両国のさらなる協力につながります。サプライチェーンの多角化と共通の基準は、信頼できるパートナーである両国が手を携えて取り組むことで、より大きな効果を発揮します。
戦略的産業には長期的な資本が不可欠
2つ目の梃子は、公の議論においてサプライチェーンほどの存在感はないものの、戦略的産業ひいては経済安全保障の成功に決定的な影響を与える要素です。半導体製造、バッテリー、新技術、重要インフラなどは、多額の資金を必要としますが、その投資の成果が現れる、あるいは投資を回収できるようになるまでには長い時間がかかります。政府は、投資を促す制度的な枠組みやインセンティブを整備することはできても、国の予算だけで必要な資金のすべてを賄うことはできません。その大部分は、機能する資本市場を通して、民間の投資主体や機関投資家から調達する必要があります。
ここで、ドイツと日本が考えるべき、重要な問いが浮かび上がります。「市場を歪めることなく、長期志向の資本をいかにして戦略的な産業に呼びこむか?」
開放性と安全保障の両立
経済安全保障がいくら大事であるからといって、経済を閉ざすことはできません。保護主義につながる経済的安全保障は、両国の繁栄を支えてきた強みそのものを損なうことになりかねません。ドイツと日本は価値を共有するパートナーとして、レジリエンスと開放性は両立し得るのだと示すことができます。これは今日の世界において決して簡単なことではなく、両国のあいだで数十年の時間をかけて築かれてきた信頼があるからこそ成り立つものです。
まさにこれが、本年のDJW東京シンポジウムのテーマです。サプライチェーンと資金調達という、別々に取り上げられることが多いものの、本来は一体として考えるべき2つの視点を結びつけます。そのための議論の場を提供し、今後数年のあいだにドイツと日本がともに答えを見出していかねばならない問いを提起します。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
