DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

デジタル革命という第3 の波に直面する世界経済

2017-10-16, 10:55

世界経済は、今まさにデジタル革命という第3 の波に直面しています。第1 の波がパーソナルコンピューターの普及であり、第2 の波はインターネットの拡大と携帯電話の浸透、そしてソーシャルメディアが持つ重要性の高まりが特徴であったのに対し、第3 の波は、人工知能(AI)、ビッグデータ、あらゆるものがネットワークに接続されていく「モノのインターネット(IOT)」を中心に進行していくとされています。半導体、センサー、バッテリーなどの低価格化が続いていることも、デジタル技術の更なる導入を可能ならしめています。

これまでの経済システムにおいて最も重要な位置を占める資源といえば原油が挙げられましたが、今後は「データ」がその役割を担うことになりましょう。ますます多くの産業分野が、デジタル化の波に巻き込まれ、そのため、多くの企業やビジネスモデルが難しい課題に対峙しています。

何かと称賛されることの多いドイツの中小企業ですが、デジタル化に関しては遅れを取っているように見受けられます。ドイツ復興金融公庫(KFW)のある調査によると、デジタル化のプロジェクトを実行に移している中小企業は、今のところ全体の約20%にしか過ぎず、30%は今なお基礎的な調査や検討の段階にあることが明らかになっています。それでもドイツそして日本の企業は、デジタル化がもたらすチャンスとリスクを見極め、相応の投資予算を確保してきているようです。投資支出の拡大は、日独両国における好調な景気動向が示すように、経済成長にプラスの刺激をもたらします。

このような背景から世界経済の見通しは明るいといえますが、デジタル化の進展は同時に、まだ答えの出ていない、しかし注目に値する多くの問いを孕んでいます。デジタル化は、労働分野にどのような影響を及ぼすのでしょうか。雇用が永続的に失われることになるのでしょうか。それとも、被雇用者に対する教育や研修への投資を図ることにより、新たな時代の仕事への適応が可能となるのでしょうか。デジタル化の進んだグローバル市場において、企業はそもそも価格の引き上げを行うことが可能なのでしょうか。それが叶わない場合、長期にわたり低インフレが続くことになるのでしょうか。

これまでに発表された、デジタル化がもたらす労働市場の変化に関する研究は、明確な結論を導き出すに至っていません。最近発表されたドイツにおける産業用ロボットの導入に関する研究論文では、肯定的な見解が示されており、ロボットは人々から仕事を奪うよりも、協働パートナーとなるだろうと予測されています。しかしながら、「マン・マシン・パートナー」として働くには、そのためのスキル、言い換えれば教育が求められることになります。デジタル化とインフレの関係については、興味深いことに、これまでのところ研究がなされていません。

総じて言えば、世界経済は再び、ありとあらゆる生活領域に変化をもたらし得る技術的な大変革の時代に差し掛かっているのです。そしてそれは同時に、日独両国間の対話と協力に多くの機会をもたらすことになるでしょう。

Gerhard Wiesheu
Partner,  Bankhaus B. Metzler seel. Sohn & Co. KGaA
Vorstandsvorsitzender, Deutsch-Japanischer Wirtschaftskreis (DJW)
info@djw.de
http://www.djw.de
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