DJW 理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

限界を迎える金融政策?

2016-10-16, 13:35

本年の世界経済の成長はここ数年同様、減速傾向にあり、程なく成長のスピードが回復するだろう兆しも見えません。世界各国の中央銀行が金融危機以来、政策金利を約700 回にわたって引き下げ、異例とも言えるほどの流動性を供給し続けてきたにもかかわらずこの有様です。そればかりか、金融政策は徐々にその限界を迎えつつあり、更なる政策展開はむしろ逆効果であり、銀行システム、保険、年金制度に悪影響を及ぼしかねないという懸念さえも生じ始めています。その一方で多くの国々において過去数十年間にわたり教育とインフラに対する支出が削減され、各地でインフラの老朽化が徐々に進んでいることからも、財政政策に対する注目が高まってきています。現在、多数の国で超低金利もしくはマイナス金利で資金調達が可能であるという状況を鑑みても、経済全体にプラスの利益をもたらし得るそのようなインフラ投資は、大変意義があるように見受けられます。しかしながら、特に日本やEU 内に散在する中断されたままの公共工事や利用されずに寂れている建造物が語るように、公共投資は国家財政の浪費という危険性を伴います。政治情勢が転換期を迎えたように思われ、そして財政支出の拡大がより頻繁に議論の俎上に載るようになってきた今こそ、政府支出の計画段階から、事業委託内容、実際の支出までをより適切にチェックすることが可及的速やかに求められましょう。米国では、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ両大統領候補者ともにインフラ投資の大幅増を選挙公約に掲げています。EUはインフラ投資を6,300億ユーロにまで倍増させる計画を立て、日本の公共投資支出も僅かながら本年既に増額されています。このような状況を踏まえると、去る5月に開催されたG7首脳会議の場で日本政府が提唱した主要先進諸国における協調財政出動についても、まだ実現の可能性が残されているといえます。協調的な財政出動が実現したならば、その効果は直ちに現われ、世界経済の成長を後押しすることでしょう。各国が、自国の生産能力の持続的向上につながる経済的に意義あるプロジェクトに投資を行う限り、政府支出の拡大は必ずしも多額の借金を意味するものではないと考えます。

 

Gerhard Wiesheu
Vorstandssprecher, Bankhaus B. Metzler seel. Sohn & Co. KGaA
Vorstandsvorsitzender, Deutsch-Japanischer Wirtschaftskreis (DJW)
info@djw.de
http://www.djw.de
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