DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより

日独間のM&A:深い結びつきをチャンスに

2024-05-15, 14:30

合併・買収(M&A)は、企業の成長加速、新市場の開拓、競争力の強化といった可能性をもたらすため、経済において重要な役割を果たしています。2つの企業が一緒になることで、コストの削減、効率性の向上、市場アクセスの改善につながるシナジーが生まれます。

地政学的緊張やその他の困難な課題によって変容を余儀なくされつつある世界秩序の中で、企業買収や出資の形 での日独協力は、今後益々戦略的な役割を果たすようになるかもしれません。日本とドイツの企業間のM&Aは、二国間関係の強化と経済的な協力の促進に寄与します。特に、政治面での連携の重要性が増している状況にあって、経済面の結びつきは両国間の橋渡しとしての役割、および安定化要因として貢献します。とりわけ、既に共通の価値観を有する国同士の間では尚更この効果が大きいと言えます。

より広範な地理的分散は、特定地域における不測の事態に対する一定の防御につながり、したがってリスク分散の手段となります。在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)と監査法人KPMGが2024年4月に発表した調査によると、地政学的な不確実性と拠点分散化への動きが、生産拠点と地域統括拠点の日本への移転、あるいは移転検討しているドイツ企業が増加傾向にある主な要因として挙げられており、さらにその背景に両国間に信頼できるパートナー関係が築かれていることへの言及があります。

多くの好例が存在

日独企業間の協力にはさまざまな可能性が考えられますが、特に日本とドイツが伝統的に強みを持つテクノロジーや製造の分野は有望です。また、金融分野においても既に重要な提携が見られています。例えば、大同生命保険株式会社がドイツの主要保険グループニュルンベルガー社に出資し、日本生命保険相互会社は独資産運用会社ドイチェ・アセット・マネジメント(DWS)の株式を取得しています。

その中でも、森精機製作所、そしてそれまで資本・業務提携を進めてきたDMG Mori Seiki (旧ギルデマイスター)との経営統合は、ドイツと日本の企業協力の成功例として傑出しています。2009年に始まったこの提携は、日独の工作機械トップメーカー2社を結びつけました。両社の統合により生まれたDMG森精機は、ドイツが誇るエンジニアリングと機械工学、そして日本の精緻な製造技術の粋を組み合わせから大きな恩恵を受けました。このシナジー効果により、製品ひいては市場でのポジションの強化を実現しています。両社は、技術革新を推進するため、研究開発におけるリソースの一元化にも取り組みました。このパートナーシップにより、既に確立されているそれぞれの市場に相互に足掛かりを得ることができたのです。これにより、新たな販売市場が開拓され、両社のグローバルプレゼンスも高まりました。

とはいえ、M&Aが一筋縄ではいかないことは言わずもがなです。企業経営や意思決定における文化の違いが摩擦につながることもあります。規制上の障壁や、しばしば両国間で異なる経済政策も複雑な障壁となり得ます。それでもなお、日独両国の経済的結びつきの深化に対する関心は高く、今後M&Aの分野でどのような展開が起こるか目が離せません。

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
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