DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイr
地政学と経済の交差:ドイツと日本をいま結びつけるもの
近年、根本的な変化が生じています。安全保障はもはや、外交や防衛政策だけの問題ではなくなりました。安全保障は、社会が機能し、企業の長期的な計画策定を可能とするための前提条件となっています。投資あるいは生産、供給に携わる人々から、デジタルサービスのグローバル展開を図る者まで、誰もがすでに実感しているはずです。安定性は今や、あえて意識する必要のない当然の背景要素などではなく、地政学的な動向と密接に結びついており、そして複雑化する世界において、ますます希少な「財」となりつつあります。
計画と成長の前提条件としての安全性
このシフトは、不都合であるものの、まごうことなき現実です。欧州周辺での紛争、インド太平洋地域で高まる緊張、サイバー攻撃、ハイブリッド型の影響力の行使は、政治、技術、経済が今ではどれほど密接に絡み合っているかを示しています。
「軍事」と「非軍事」の境界は、もはや明確な所管、明確な責任範囲に沿って引かれているわけではありません。サプライチェーン、データストリーム、エネルギー供給、通信ネットワークといった分野を横断しており、言い換えれば、私たちの経済の生命線(ライフライン)の真ん中を貫いているのです。安全保障は、決してひとつの角度からとらえられるものではなく、経済、技術、産業、そして国家の相互作用であり、まさにその点においてドイツと日本は互いに多くを学ぶことができます。
ドイツと日本:不確実な時代において価値を共有するパートナー
このテーマに関しても、ドイツと日本の協力はますます重要になってきています。両国は民主主義の価値観を共有するパートナーであり、どちらも高度にネットワーク化された工業国であり、開かれた貿易ルートと安定したルールに依存しています。パワーポリティクスの色合いが再び強まっている時代において、この共通基盤は、パートナーシップをうたう文書によくありがちな単なる耳障りのよい共通点とは比較にならないほどの意味を持ちます。このような基盤があるからこそ、お互いに対する信頼のもとで、慎重を期するテーマについて話し合うことが可能となるのです。
レジリエンス政策は今日、産業立地政策でもある
経済の見地からも、両国にとって重要な点があります。安全保障政策とレジリエンス政策は、ますます「産業立地政策」の様相を呈するようになってきています。地政学的リスクは企業のビジネスモデルに直接的な影響を与えており、そのことを示す近年の事例は枚挙にいとまがありません。
その一方で、リスクが明確に特定される分野では、イノベーションの余地も生まれます。サイバー防衛、重要インフラの保護、新しいセンサー技術や通信技術、透明性と対応能力を高める技術などが挙げられます。そのように捉えたならば、防衛支出は単なるコスト要因ではないのです。適切にデザインされたならば、それらは技術開発や競争力の推進力にもなり得ます。それというのも、投資とイノベーションは安定した秩序が前提となるからです。
2026年のDJWシンポジウムは、まさにこの緊張関係を意識して開催いたします。答えを今すぐに提示することを目指してはいません。対話のための強固な基盤を築くことを目的にしています。今日、「安全保障」とは何を意味するのでしょうか?伝統的な重工業・防衛企業から、新たなアプローチを試みる新興企業まで、産業と技術はどのような役割を担っているのでしょうか?そして、協力と責任のあり方を、民主主義の原則と両立させながら、どのように形作っていくことができるでしょうか?シンポジウムでは、このような問いを中心に活発な議論を展開していきたいと考えています。
