DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより

日本でのG7サミット:協力関係の強化が鍵になる

2023-03-14, 14:52

ロシアのウクライナ攻撃は、G7諸国への警鐘とも言えるでしょう。経済的な対立だけでなく、軍事的な対立も復活しているのです。したがって、今年のG7サミットのポイントは、経済面と同様、安全保障面における極めて厳しい課題についての共同解決策を見出すことにあると言えます。

ロシアの侵略に加え、インド太平洋地域の危険な状況の悪化は、日本政府にとって既存の安全保障政策の基本方針を改めて見直すことを促すきっかけとなりました。その結果、日本は単に受け身なだけの防衛態勢を放棄し、抑止力に重点を置いた新しい国家安全保障戦略を打ち出すこととなりました。軍事予算は2027年までにGDPの1.0%から2.0%に倍増する予定です。これにより、日本は米国と中国に次いで世界第3位の防衛予算を持つことになります。また、軍事や地政学的な問題で、米国や他のG7諸国との協力関係を強化することも目標に掲げています。ドイツでも、防衛費は1000億ユーロの特別基金により、GDPの2%というNATOの目標に近づきつつあります。差し迫った危機が強まる印象の中で、より緊密な協力を実現するための効果的なガイドラインに向けた好ましい前提条件が整ってきているように見えます。日本から見れば、世界の核兵器の封じ込めに関する議論を推進することも実現可能な目標のひとつになりそうです。少なくともサミットは広島で開催なのです。

深化そして多様化する協力関係

コロナ・パンデミックによって、貿易関係や経済インフラの問題において、必ずしも効率が経済政策行動の唯一の基準であってはならないことが既に明示されております。サプライチェーンが多様化せず、一部の貿易相手国にのみ依存することは、経済的・政治的に大きなリスクを孕んでいると言えます。数年来、日本政府は、米国を筆頭とするパートナー諸国とともに、経済安全保障の問題に取り組んできました。

ここ数年、すでにいくつかの成功が得られていると思います。例えば、レアアースの分野における日本の中国への輸入依存度は、90%から60%に低下しました。また、重要なサプライチェーン、国内特許、インフラ、主要なイノベーションを保護するための法的枠組みとして、「経済安全保障推進法」が制定されています。また、単一のルートや地域に依存しないよう、代替的な貿易ルートの構築も試行されております。2022年、G7と世界銀行は共同で、世界の農業と食料システムの持続可能な変革を確保するため、「食料安全保障のためのグローバル・アライアンス」を立ち上げました。

システム構築に係わりのある原材料や技術の安全なサプライチェーンを確立し、世界の食料供給を確保するためには、国内部門、国際部門双方の取り組みが必要となります。投資だけでなく、安全保障およびその管理に係る問題についても、特にパートナー諸国の間での緊密な協力が必要不可欠となります。ロシアの侵略に対応したG7諸国の結束力が驚くほど高かったことは、将来、より緊密かつ成功裡な協力態勢が構築できる可能性が高いことを示していると存じます。

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
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