DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより
2024年欧州議会選挙:欧州大陸は転換期を迎えているのか?
2024年6月の欧州議会選挙は、欧州連合(EU)にチャンスとともに課題をももたらす政治的変化を引き起こしました。今回の選挙結果は、従来の親EU政党に対するある種の懐疑的な見方が反映されたと言え、ポピュリスト勢力や欧州懐疑主義派が影響力を持つようになりました。とはいえ、欧州懐疑主義派が獲得した勢力が、懸念されていたよりも小さかったことも事実です。全体として、今回の選挙結果は、中道右派の欧州人民党(EPP)や中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)などの親EU政党が議会で依然として強い勢力を維持していることを示しており、これはEU政策において継続性と安定性が維持される証しと評価することができるかと思います。一般的に、安定した政治状況は投資家からの信頼につながり、また経済面での統合を推進するため、これは経済環境全般にプラスの影響を与えるはずです。そして、これはEUのパートナーにとっても前向きな兆候となり得ます。
欧州外交政策の注目
それというのも、今回の選挙では、欧州の外交政策も焦点となったからです。 EU議会の新しい政治構成においてはさまざまな見解が示されてはいるものの、基本的には、ロシアの侵略に関してEUのウクライナ支援は引き続き強固なものとなっています。一部の右派ポピュリスト政党は親ロシア的姿勢を示していますが、コンセンサスとしては依然として強い親ウクライナ姿勢です。直近のイタリアG7サミットにおいて、500億米ドル超の融資による資金をウクライナに提供することが決定されたのも、まさにその表れでしょう。この点からも、EUの外交政策に急激な変化の兆しは見られないと言えます。
日本にとって欧州議会選挙は何を意味するのか?
今回の欧州議会選挙は、EUの戦略的・経済的に非常に重要な同盟国である日本にとっても興味深いものでした。EUと日本の関係は、共通の価値観と関心に基づく緊密かつ多面的なパートナーシップによって特徴づけられています。
2019年2月に発効した日・EU経済連携協定(EPA)は、世界最大規模の二者間貿易協定であり、EUと日本の間の経済強化および協力関係に大きく貢献しています。貿易、テクノロジー、安全保障、環境保護の分野における協力関係を深めることにより、EUと日本は両地域の安定と繁栄を促進しています。従って、今回の選挙により、今後この重要なパートナーシップに何らかの変化が生じることはないと考えています。