DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより
欧州と日本はデジタルパートナーシップ連携を強化
緊密化する欧州と日本の連携
ウクライナでの戦争の先行きや世界の政治情勢が再編される可能性など、依然として不透明な状況が続いています。この侵攻による危機に伴い、国際的なパートナーシップと価値観を共有する共同体の重要性が改めて再認識されることとなりました。対ロシア制裁に際して西側諸国が共同歩調を取って実施したアプローチの大部分は、その典型的な指標となるものです。
そして、欧州と日本の外交関係が改めて緊密化しました。ドイツについて見れば、ショルツ首相がアジアでの最初の訪問国として日本を選定したことは、日独関係の重要性を明確に象徴するものであったことは間違いないでしょう(注記)。さらに加えて、今年5月には将来を展望する意義のある日・EU首脳会談が行われました。とはいえ、日欧関係の緊密化については、何もロシアの侵略戦争が開始されてから始められた訳ではなく、それ以前から継続されているのです。
(注記)
4月末にショルツ首相が初めてアジアを訪問した際、独経済界を代表する10名の派遣団を伴っていました。その中には、ゲルハルト・ヴィースホイ氏も含まれており、この訪日は、コロナ禍を経て待ちに待った久方振りの対面での外交会談実現の場となり、日独両国の経済関係を改めて深め、将来に向けて新たな弾みをつける機会となりました。
デジタル化と安全保障政策 - 今後のテーマ -
2019年に発効した日本とEUの自由貿易協定は、両地域間の関係緊密化の礎となるものであるといえます。さらに、この協定は、公式的にも象徴的にも今後に続く様々な協定の土台となるものであり、今後のパートナーシップの戦略的方向性を示すものとして位置付けられるものです。
将来を見据えると、デジタル化が重要な役割を果たすことは間違いありません。技術とその応用範囲は、国際的な協力関係におけるほぼすべての分野に及んでいます。そして、日独両国共にこの分野では国際比較においてまだキャッチアップせねばならない必要性があります。日本は特に地方でのデジタル化をさらに推進する必要があり、ここでは海外のパートナーとの協力にも頼っていかねばなりません。今回新たに合意された日・EUデジタルパートナーシップは、その重要性の表れです。データフロー、安全保障政策、データ授受促進、イノベーション、グリーン・インターネット・インフラの構築・規制等の幅広いテーマに及ぶものです。両国とも、協定を迅速に実施する予定であることを強調しています。イノベーション推進力が重要な経済的要因となるのは間違いありませんが、加えて、安全保障政策が殊更に重要なテーマとなるでしょう。
また、日欧はグローバルゲートウェイプログラムの枠組みでの協力関係強化について合意しました。これで、民主主義国家が再び第三国にとって魅力的なパートナーとなることにより、シナジー効果も期待できるのです。
これらを成功裡に実現するには、間違いなくまだまだ多くの努力が必要です。とはいえ、2021年の日・EU間の貿易量が(2019年に比べて)増加している事実に加え、企業や産業界関係者からはポジティブな兆候が出てきています。そして最後になりますが、ウクライナ紛争とそれに伴う民主主義諸国における共通の価値観の認識により、国際的な協力強化に向けた更なる意欲が高まったことが確認されたことが何よりも重要です。