DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ
シュタインマイヤー連邦大統領の訪日:価値観、変化、成長
日本とドイツは、地理的には遠く離れているものの、多くの点で非常に近しい関係にあります。両国とも、法の支配、自由、開かれた社会へのコミットメントが深く根づいた民主主義国家です。どちらも、卓越した技術大国であり、地政学的緊張、人口動態の変化、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を前に、同じような課題に対峙しています。
この度のフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー連邦大統領率いる代表団の日本滞在中の数々の対話を通しても、上述のような価値観が両国の間に共有されている事実を肌で感じることができました。シュタインマイヤー大統領は、2017年の就任以来、何度も日本を訪問しており、まさに大統領が日本との結び付きを重視していることの表れと言えます。大変光栄なことに、私は訪日代表団の一員として今回また新たに大統領に随行させていただきましたが、経済問題の枠を超えて日独間の連携が秘める可能性の大きさが示された、非常に印象深い視察旅行となりました。
両国を結び付ける要素としてのイノベーション
今回の訪日旅行では、人工知能(AI)にはじまり、モビリティ、宇宙、電気通信分野における先端技術など、「イノベーション」が対話や交流の中心テーマとなりました。とりわけ刺激的だったのは、研究、実践、未来へのビジョンの見事な融合を披露してくれた東京科学大学(Institute of Science Tokyo)の訪問です。両国にとって、イノベーションはそれ自体が目的なのではなく、社会的責任と密接に結びついていることがはっきりと示されました。
このことは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)においてもはっきりと見て取れました。大統領とともにドイツ・ナショナルデーの開会式典に出席させていただきましたが、万博会場では、持続可能な建築、インテリジェントなエネルギー・ネットワーク、そして学際的なコラボレーションなどを通して、未来が目に見える形で鮮やかに提示されていました。これらの日独両国の事例からは、「イノベーションと持続可能性は対をなすものであり、両輪で機能してはじめて成功する」という強いメッセージを感じ取ることができます。
同じ目線に立った経済対話
技術分野における対話に加え、主要な経済政策テーマも今回の訪日団のアジェンダのひとつでした。たとえば、在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)とドイツ企業との円卓会議では、投資促進のための枠組みや強靭なサプライチェーンの構築、半導体産業の戦略的重要性、熟練労働者不足などについて議論が交わされました。これらはいずれも日独両国が等しく関心を寄せる問題です。
もうひとつのハイライトは、ドイツ産業連盟(BDI)のタニヤ・ゲナー事務局長が主導した、日本を代表する経済団体である経団連との対話です。ここでも、ドイツと日本は単に同じような経済的課題に直面しているだけでなく、相携え課題に取り組む用意があることが明確になりました。
新たな協業分野:外交と安全保障
今回の日本訪問を通して、経済協力は安全保障政策の検討と切り離して考えることはできないという点も明らかになりました。東京で行われた石破茂首相との会談では、ウクライナ戦争やインド太平洋情勢のみならず、21世紀において民主主義国家が、保護主義に走り市場を切り離すことなく経済主権を確保するにはどうすればよいかという問いにも議論が及びました。とりわけ、政治経済体制の相違をめぐる対立がますます深まるこの時代において、信頼に足る、共通の価値観に基づくパートナーシップは計り知れない価値を有しています。その観点からも、ドイツにとって日本はアジア太平洋地域における重要なパートナーなのです。
所感
このたびの日本訪問は、私にとって非常に印象に残る旅となりました。生の対話がいかに重要であるか、そして直接的な交流は何物にも代え難いものである、ということを、改めて実感しました。滞在中の対話や交流ではつねに、オープンさ、お互いに対する関心、もてなしの気持ちが感じられました。
研究分野であれ、投資に係る分野であれ、あるいはグローバル規模での未来の問いに取り組んでいくうえでも、日独間の協力は非常に大きな可能性を有します。もちろん、両国間のパートナーシップの成功は放っておいても自動的に達成できるようなものではありません。しかし、激動の時代において進むべき方向性を明らかにし、舵を取っていくために必要なものはすべて揃っています。それは、価値の共有であり、相互の尊重であり、未来を形成していくという確固たる意志にほかなりません。
