DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより

レジリエンスの向上――ドイツ企業と日本企業はどのような戦略を取るべきか?

2024-07-11, 13:28

ある言葉があるとき突然バズる、すなわち大流行語になることがあります。ふと気づけば、毎日のようにその言葉耳にするようになり、誰もがその言葉を口にするようになるのです。そうなったらもう避けて通ることはできませんし、ときには、その年の流行語大賞に選ばれることさえあります。

2022年のドイツの経済流行語大賞を覚えていますか?

そう、「レジリエンス」でした。レジリエンスとは、ひとつのシステムが危機を経て、再び元の状態へと回復すること、それのみならず、危機的状況を乗り越えたことで、さらに強靭になって復活する能力のことを指します。

そして近年、ひとつの危機から、次の危機へと、危機が途切れることなく発生しているように感じられます。銀行危機から債務危機へ、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの発生からロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機へといった具合にです。翌2023年の流行語大賞に「危機モード(Krisenmodus)」が選ばれたのも、当然の結果と言えるでしょう。「非常事態」の「常態化」が起こっているのです。

変化を起こすには勇気が必要

数々の危機、今日の世界が陥っている危機モード、そして部分的にはそれらによってもたらされる劇的な影響によって、私たちの経済、政治、社会は、いかにレジリエンスが重要であるかを目の当たりにしています。私たちは皆、絶えず新しい現実に適応し、同時に抵抗力を維持していかなければなりません。それこそが、未来へ向けた備えであり、生き残りにおいて決定的な意味を持つのです。

適応とは、変化を意味します。そして、変化を起こすには勇気が必要です。なぜなら、下した決断や、新たに定めた方向性が正しいこと、そして将来にわたり有効であることは誰にも保証できないからです。

長い伝統と豊かな経験を持つ企業は、経験からの学びを活かすことで、変化のプロセスに柔軟に対応できる可能性が高いと言えます。ドイツと日本にはまさに、何十年あるいは何百年という歴史を持つ企業が数多く存在します。これらの企業は、創業以来、数々の難事を切り抜け、レジリエンスの高さを証明してきました。変化に対してオープンで、新たな技術や新たな状況の展開に対しても保守的な姿勢をとることなく、柔軟に向き合います。自らのビジネスモデルが、いつの間にか時代の変化に取り残されていないか、検証することも怠りません。必要とあらば、組織内で抜本的な変革を断行することさえ躊躇しません。

信頼の置けるパートナーとの交流

危機に対する建設的な対応には、多くの打ち手やさまざまな戦略がありますが、決まって大きな意義を持つのが、パートナー間の交流です。ドイツと日本は、同じような経済的、そして社会的課題に直面しています。これらの課題によりうまく対応し、解決していくうえで、両国の間、日独企業の間での信頼に基づいた対話と協力が計り知れない価値をもたらします。

「レジリエンスと未来への備え」をテーマに、2024年7月3日に開催されたDJWシンポジウム 2024では、日独コミュニティで活躍される皆様に、レジリエンスの向上と未来を見据えた生き残りのためのさまざまな企業戦略について集中的に意見交換を行う機会を提供しました。その内容は、多角化から中核製品への再集中まで多岐にわたり、パネリスト、そして参加者の間で活発な議論が交わされました。サプライチェーンのレジリエンス、貿易協定、先進技術、変化への柔軟な対応等々、本年のシンポジウムは、経済そして各企業が未来に備え、レジリエンスを高めていくためのアイデア、そして知恵の絞り合いと様々な議論のための有益なプラットフォームになったのではないでしょうか。

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
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