DJW 理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ
欧州の政治情勢
先のフランス大統領選におけるエマニュエル・マクロン氏の勝利、そしてマクロン大統領率いる「共和国前進」の国民議会選挙での過半数獲得は、共同体としての欧州の将来に再び多少なりともの安堵感をもたらしました。年初にはまだ、昨年の英国のEU 離脱、更には米国大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利によって深まった、右傾化と欧州連合の空中分解に対する深刻な懸念が見られました。欧州連合の生き残りを掛けた戦いを通し、独仏政府間の連携が復活し、また欧州連合ならびにユーロ圏の更なる発展に団結して対応する用意があることが示されるなど、フランスとドイツは考え方を根本的に変えるに至ったように見受けられます。9 月に予定されているドイツ連邦議会選挙の結果により、その方向性に変化が起こることはほとんどないだろうと考えられ、それだけに一層、欧州内の順調な経済成長が独仏連携のプロセスを幾らか容易にすることに間違いありません。しかし、両国の間にはこれまでと同様、国家ならびに自由市場の役割に関する政治哲学面での明白な相違が見られることから、復活した独仏間の政治的協力関係が、今後いかに忍耐強く、いかに幅広い問題に対処できるかが明らかになるまでは、もう少し見守る必要があるでしょう。加えて、改革の遅れが目立つイタリア、そして英国のEU 離脱(Brexit)交渉が、今後数年にわたり、欧州にとって解決困難な課題としてそびえ立ちます。しかしその一方で、先の英国総選挙の驚きの結果により、少なくとも建設的な交渉がなされる可能性、そして「ソフトBrexit」の可能性が高まったと言えます。
日本においても、内閣府が6 月に発表した指標によると、同国経済は緩やかな回復基調が続いていることが示されています。喜ばしいことに拡大傾向にある企業の投資支出が特に、景気の安定的な改善に寄与しています。このような状況の中、日本における労働力不足の進展が、賃金ならびにロボットや新たなテクノロジーの導入にどのような影響を与えていくのかが、大いに注目されるところです。押しなべて、労働力不足の問題改善に対する圧力は、技術進歩の加速、そして投資需要の上昇を後押しすると言えます。それとともに、日本の景気回復は、息の長いものとなり得るでしょう。
昨今注目を集める新たなテクノロジーの一つに、水素技術が挙げられます。水素技術は、代替エネルギーとして、輸送分野をはじめとするエネルギー供給において、様々な活用の可能性が期待されています。DJW では、日独両国における水素エネルギー技術開発ならびに応用の現状と将来像を議論すべく、本年5 月にドイツ・ヘルテンにてシンポジウムを開催しました。来る10 月2 日の東京シンポジウムでも、同テーマを取り上げ議論を深めて参ります。多くの皆様のご参加をお待ちしております。