DJW 理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

伊勢志摩サミット(第42回先進国首脳会議)

2016-07-17, 10:52

欧州難民問題、世界的な地政学的緊張、そして世界経済の成長鈍化を背景に、第42回先進国首脳会議(G7サミット)が、5月26日から27日にかけ日本の伊勢志摩にて開催されました。総論では、サミット参加各国首脳の間に、緊密な連携の下、グローバルな重要課題に対し共に立ち向かうことへの合意が得られました。特に、欧州連合と日本間に、自由貿易協定交渉に関し今年中の合意を目指すとの確認がなされたことは、今回のG7サミットの成果であったといえます。経済政策については、共同宣言の採択で一致は見られなかったものの、各国がそれぞれの国内状況にあわせ可能な範囲において経済成長のための刺激策を講じていくことが確認されました。このような方向性に基づき、安倍晋三首相は、グローバル規模での財政出動の必要性について、サミット参加各国を説得することができませんでした。日本の経済成長は、2014年4月に実施された消費税の引き上げを機に著しく失速しており、それ以来この後退から回復できずにいます。安倍首相は今後、本年国内総生産(GDP)成長率1%程度となる見通しの国内経済を、国際的な支援なしに押し上げていかねばなりません。

これまで安倍首相が進める金融緩和・財政出動策を模様眺めしてきたドイツですが、今後ドイツの緊縮財政策、そしてGDPの8%以上に相当する黒字を記録した同国の経常収支に対し国際的な批判が再び集まるのも、恐らくは時間の問題であると考えます。2,500億ユーロにも上る貯蓄が国外へ流出しており、その理由は、ドイツ国内に投資が必要とされてないことに他なりません。これでは、政府による投資支出が帳帳消しになっているようなもので、国内インフラの老朽化という結果を伴います。加えて、ドイツ企業が国内に魅力的な投資先を見出せていないことが窺えます。ドイツは早晩、財政規律重視路線を再考し、より優れた投資環境を整える必要に迫られるでしょう。

ベルリンで開催された本年のDJWシンポジウムでは、日独スタートアップ分野における投資の可能性、知識の移転、そして更なるネットワーク化をその中心テーマに取り上げました。約250名の参加者が「起業と成長。日独のスタートアップ企業とベンチャー・エコシステム」について議論を交わし、これらの参加者とともに、約20名の起業家、投資家、政府関係者が、活発な意見交換と、経験や事例の紹介を行いました。これらの議論の最初の具体的な成果物として、スタートアップ関連分野における日独ネットワークの拡大と充実を目的として、DJW内に「スタートアップ・ワーキンググループ」が発足する運びとなりました。更に2016年10月4日には、ベルリン同様「日独スタートアップ」をテーマに、日本工業倶楽部を会場としてDJW東京シンポジウムの開催も予定されています。

Gerhard Wiesheu
Vorstandssprecher, Bankhaus B. Metzler seel. Sohn & Co. KGaA
Vorstandsvorsitzender, Deutsch-Japanischer Wirtschaftskreis (DJW)
info@djw.de
http://www.djw.de
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