DJW 理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

2017年経済展望

2017-01-09, 13:24

ドナルド・トランプ氏を第45代大統領に選出した米国大統領選挙は、EUからの離脱(Brexit)を決めた英国での国民投票に続く、2016年の衝撃的な政治ニュースでした。開票結果のショックはしかし、早朝には5%以上の急落を見せたものの、その後反転し、前日比プラスの終値で取引を終了した11月9日の米国株式市場の相場からも読み取れるように、数時間のうちに米国経済に対する楽観論に取って代わられました。米国経済に対する楽観的見通しは、法人税率ならびに所得税率の引き下げ、公共インフラ投資の拡大、金融およびエネルギー・セクターにおける規制緩和への期待に基づくものです。トランプ氏が実際にこれらの選挙公約を一定程度実行に移したならば、今後数年間その経済政策により財政赤字が著しく増大したとしても、米国の経済成長は結果的に、2017、18年それぞれの当初予測2.0%に対し、2017年は2.3%まで、2018年は約3.0%まで加速すると考えられます。日独両国は、米国の力強い経済成長から大いに恩恵を受ける国々の一員であると言ってよいでしょう。加えて、トランプ氏は大統領就任後直ちに、ヨーロッパと日本に対し、統計上は両地域の高い経済成長につながり得る、防衛関連予算の増強を強く迫る可能性があります。

極めて不透明なのは、米国の今後の通商政策です。選挙期間を通してトランプ氏は度々、第2次世界大戦以降に築かれてきた世界の自由貿易システムや世界貿易機関の終焉をも示唆するかのような、広範にわたる保護主義的な施策について言及してきています。しかしながら、大統領選に勝利してからは、本テーマに関する発言はこれまでのところ抑制の効いた内容となっており、保護貿易職の強い具体的政策は発表されていません。好調な米国経済の現状を背景に、貿易障壁を顕著に高める方向への圧力がトランプ氏にかかることは現時点ではあまり考えられません。ただし、同氏の自伝を手繰れば、トランプ氏が過去常に、基本的には保護主義的政策を支持していたことが明らかです。これらのことから恐らくは、米国の景気が減速する事態となり初めて、輸出依存度の高い日独両経済が特に甚大な影響を被り得る、本格的な保護貿易主義的施策が米国において取られるリスクが高まるだろうと考えられます。

Gerhard Wiesheu
Vorstandssprecher, Bankhaus B. Metzler seel. Sohn & Co. KGaA
Vorstandsvorsitzender, Deutsch-Japanischer Wirtschaftskreis (DJW)
info@djw.de
http://www.djw.de
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