DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイより

ウクライナ紛争:地政学がまさにエネルギー政策に

2022-02-15, 09:33

ウクライナ危機は地政学的なものであり、欧州とロシアの安全保障上の利害関係に深く関っています。同時にこれは欧州がロシアからのエネルギー輸入に大きく依存していることも示しており、特に、オランダで取引される天然ガス契約の価格が、2020年5月のメガワット/時間当たり5ユーロ程度から2021年12月には同140ユーロ近くにまでに爆発的に高騰した事実においても明らかです。 もっとも、このところでは天然ガス価格は再び下がり、メガワット/時間当たり75ユーロ程度になっていますが、これは何よりも日本が欧州向けに余剰LNG(液化天然ガス)を供給する意向を示したことも一因であると思われます。

残念ながら、ウクライナでの軍事衝突はまだいつ勃発してもおかしくない状況にあり、欧州だけでなく全世界レベルで価格の乱高下や供給のボトルネックを伴うエネルギー危機が引き起こされる可能性は排除出来ません。さらに、欧州の天然ガス需要は、今後数年にわたり脱炭素化に向けたエネルギー転換の過程で増加する可能性が高いと予想されます。天然ガスは、CO2や粒子状物質の排出量において、他の従来型エネルギー源よりも明らかに優れています。また、天然ガスのインフラは、将来的にグリーン水素の輸送にも活用することが可能です。従って、欧州は天然ガスの供給源を地理的に分散多角化させることを早急に行う必要があります。ただし、一方でロシアがこれまで常に契約上のあらゆる義務を履行してきたことも忘れてはなりません。包括的に言えることは、ウクライナ紛争においてはやはり外交による解決策が見出されねばならない、ということです。エネルギー価格の高騰と供給リスクが明らかになったことは、全ての人々にとって一様にエネルギー転換のペースを上げるインセンティブとなるはずです。

当協会もこれに貢献したいと考えています。来る2022年3月9日に開催されるイベント DJW "Spot On!"「京都議定書から25年 ー 気候変動対策の今」では、なぜ国際的な技術協力と円滑な知識・技能の移転がこれまで以上に重要なのか、という点について皆さんと議論していきたいと考えています。

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
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