DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

日本の経済変革と、ドイツへの示唆

2026-08-17, 08:30

コラムの本題に入る前に、個人的な言葉を述べさせていただきます。日本はふたたび大きな試練に見舞われました。熊本県で発生した地震により、尊い命が失われ、多くのご家族、そして地域社会が甚大な被害を受けました。犠牲となられた方々、ご遺族の皆様、被災された方々、そして現地で支援活動や復興に取り組んでいるすべての方に、心よりお見舞い申し上げます。

日独産業協会(DJW)では、ドイツと日本が経済的にも、文化的にも、そして何よりも人と人のつながりを通して、いかに深く結びついているかを日々実感しています。だからこそ私たちは、日本の現下の動向を、これまで以上に注視しています。

変わりつつある日本経済

日本は経済面において、これまで幾度となく忍耐を求められてきました。上昇、失望、そして復活という長いサイクルを、これほど象徴的にたどってきた株式市場は、他にあまりありません。1980年代の終わりには、日本経済の勢いはとどまるところを知らぬかのように見えました。しかし、株価や地価の資産価格バブルが崩壊すると、日本経済は数十年にわたり、デフレと名目成長率の低迷が続きました。

今、この局面は終わりを迎えました。日本の株式市場は、歴史的な最高値を更新しました。もっとも、記録の更新そのものよりも重要なのは、それが何に支えられているのかという点です。これは、遅れてやってきたキャッチアップに過ぎないのでしょうか?それとも、日本経済は根本から変わりつつあるのでしょうか?

多くのことが、今回の変化がより広くかつ堅固な基盤の上に築かれていることを示しています。日本企業の強みは決して失われたわけではありません。日本には、何十年もの時間をかけて培ってきた卓越したエンジニアリング力があり、世界市場のニッチな分野でトップシェアを誇る企業群を含む、強力なブランドが存在します。真の問題は、多くの場合、製品の品質そのものよりも、生み出された資本の活用の仕方にあったのです。潤沢な資金が現金や預金として保有され、多くの企業が持つ優れた技術力が、より高い企業価値の創出、ひいては投資家への還元に十分つながっていなかったのです。

企業の責任に対する新たな理解

まさにこの点において、現在、注目すべき変化が起きています。ここ数年推し進められてきたコーポレート・ガバナンス改革が奏功し、企業は保有する株式の構成を見直し、収益性の低い資産を売却し、配当を増やし、自社株買いを行っています。ここで重要なのは、企業の責任に対する考え方の変化です。もはや企業規模や安定性だけに焦点が当てられることはなく、投入した資本がどれだけの収益を生み出しているかという点が、ますます重視されるようになってきています。これは、単なる資本市場のテクニカルな改革にとどまりません。日本企業の自己認識、企業としてのあり方に関わる変化なのです。

加えて、マクロ経済の環境にも変化が生じています。数十年にわたるデフレを経て、緩やかな物価上昇と賃金の上昇が戻ってきています。市場において強いポジションを持つ企業にとって、これは非常に重要な意味を持つ可能性があります。

人工知能(AI)と産業機械の交差点

現在進行中の大規模な技術変革のプロセスにおいて、日本が果たす役割を見過ごすこともできません。AIについて語るとき、たいていはまず米国の大手企業に目が向きます。しかし、AIには物理的なインフラが必要です。具体的には、半導体であり、製造設備であり、センサー、特殊化学薬品、データセンター、その他の高性能なコンポーネントなどです。

こうした分野の多くで、日本企業は世界のトップクラスの位置を占めています。デジタルトランスフォーメーションにおいて、日本は単なる利用者ではなく、変革に不可欠な技術の供給者でもあるのです。ロボット工学や自動化の分野でも同じことが言えます。人口動態の変化を背景に、これらの技術は今後さらに重要性を増していくことでしょう。日本は、AIと、産業機械や生産プロセスとが結びつく領域において、類まれな能力を有しています。

共通の課題、共通のチャンス

ドイツ企業にとっては、日本とのさまざまな接点、新たな協力の機会につながります。両国は、高齢化する社会、専門人材の不足、イノベーションへの強いプレッシャー、産業の脱炭素化、そして強靭なサプライチェーンの構築といった、共通の課題に直面しています。

だからこそ、日本経済の新たな動きを、金融市場の観点からのみ捉えるべきではありません。その先には、産業分野での協力、共同研究、技術提携、投資の新たな可能性が広がっています。特にロボット工学、半導体、モビリティ、エネルギー、サイバーセキュリティ、産業AIといった分野において、ドイツと日本は協力し、ともに利益を享受できる可能性があります。

以上のことから、株式市場の高値更新は、単なる数字以上の意味を持つと言えます。それは新たな自信の表れであり、おそらくは企業の文化的変容の表れでもあります。30年以上の歳月を経て、日本は単に1989年の水準を取り戻したのではありません。日本経済そのものが変わったのです。

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
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