DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ
転換期を迎えるグローバル安全保障――戦略的パートナーとしてのドイツと日本
今日、世界経済秩序が厳しい圧力にさらされています。強まる一方の保護主義的な傾向、直近では米国による欧州および日本製品に対する関税措置が、国際的なサプライチェーンの不確実性を高めています。
ドイツや日本のような輸出志向型経済の国にとって、このような状況は明確な警告シグナルであると言えます。この状況が改善する可能性は短期的にはほとんど期待できません。対して、ドイツと日本は自由貿易と開かれた市場を拠りどころとしており、この両国間の協力が、進行する世界貿易の分断化に対する対抗軸として機能する可能性があります。
加えて、ドイツは経済の変革プロセスの真っ只中にあります。景気の低迷、構造変化、地政学的リスクを背景に、輸出を中心としたドイツの経済モデルは根本的な課題をつきつけられています。それだけに尚のこと、一方的な依存関係から、信頼できる複数のパートナーとの信頼関係強化へと、狙いを定めた通商関係の多様化が重要になってきます。この点で説得力のある展望を提供してくれるのが日本です。経済が高度に発展し、長期的な投資意欲を持ち、多国間ルールへの明確なコミットメントを示す国であるからです。その日本もまた、経済の建て直しから人口動態の変化、アジア太平洋地域の地政学的緊張に至るまで、並々ならぬ激変に直面しています。
しかし、この混沌とした状況にこそチャンスが潜んでいるのです。たとえば科学技術政策、強靭なサプライチェーンの構築、持続可能性とデジタル化への投資などにおいて、ドイツと日本は、各々の相互補完的な強みを戦略的に組み合わせることができます。それというのも、相互経済協力を実現するには、明確なルールと互いの信頼関係、そして関税や政治的圧力に阻まれることのない、信頼するに足る国家的枠組み条件が必要となるからです。経済的安全保障がますます政治問題化する世界において、日独パートナーシップはルールに基づく、レジリエンスの高いグローバル化のモデルになり得ます。
2025年9月5日に東京で開催されるDJWシンポジウムでは、まさにこの問題をテーマに取り上げ、専門家の皆様、参加者の皆様と議論を行う予定です。参加をご希望の方は、DJWウェブサイトよりお申し込みください。この機に、東京で皆様にお目にかかれますことを楽しみにしております。
