DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

トランプ? それともハリス? 米大統領選の結果が日独両国に与える影響は?

2024-08-14, 22:15

米大統領選本番はまさに刻々と迫ってきており、その帰趨は疑いの余地なく、米国のみならず世界にとって今後の重要な方向性を示すものになるであろうと認識されております。ジョー・バイデン現大統領が大統領選からの撤退を表明したことで、選挙戦の構図が様変わりしました。新たに民主党大統領候補となったカマラ・ハリス副大統領は、ティム・ワルツ副大統領候補とともに大統領選へ挑みます。これまでミネソタ州知事を務めてきたワルツ氏を擁立することで、米中西部の農村部を中心とした有権者へのアピール、それにともなういわゆる“スウィング・ステーツ”(激戦州)での民主党選挙キャンペーンの強化を狙っています。対する共和党の候補は、ドナルド・トランプ前大統領とJ.D.ヴァンス上院議員。世論調査では今のところ民主党がやや優勢ですが、現状、接戦が続いています。

民主党の勝利……?

カマラ・ハリス、ティム・ワルツ両氏は、民主党の進歩的な政策の継続を支持しています。ハリス氏はこれまでの副大統領在任期間を通して、社会的公正、医療制度の拡大、気候変動対策を推進してきました。ワルツ氏は、労働者階級や農村部の有権者のニーズに焦点を当てた、現実的かつ農村部重視の政治で、ハリス氏とのコンビを補完しています。両者とも、経済分野、特に環境保護や労働者の権利についての規制強化を打ち出しており、環境技術への投資、最低賃金の引き上げ、社会保障制度の拡充を訴えています。

ハリス氏が大統領に就任した場合の同国の外交政策は、バイデン現大統領の外交政策の継続となるでしょう。ハリス氏はこれまで、国際的な同盟関係を強化し、国連やNATOなどの多国間の枠組みを支援することの重要性を繰り返し強調してきました。以上を鑑みれば、米国は、ドイツと日本にとって信頼できるパートナーであり続けると言えるでしょう。

……それとも、やはりドナルド・トランプ?

これに対しドナルド・トランプ前大統領は、「アメリカ第一主義」の原則にフォーカスした、国粋主義的な政策を主張。厳格な移民政策、合法的な滞在資格を持たない数百万人の不法移民の国外退去、タカ派的な外交政策、国際機関に対する国家主権の強化を表明しています。その一方でトランプ氏は、規制緩和と法人税率の引き下げといった市場重視の経済政策も追求しています。政府による経済への干渉を減らし、経済成長の促進を目指すものです。しかしながら、その政策は保護主義的な考えが色濃く反映されており、トランプ氏の観点から「米国にとってより公平である」と思われる貿易協定に焦点が置かれています。その際、とりわけ、すべての輸入品に対する最低10%の関税課税導入を表明しています。

米国はこれらによって孤立主義政策の路線を歩んでいくことになると見られます。それにともない、日本と欧州は多かれ少なかれ独力でやり抜くことを余儀なくされるようになると考えられます。トランプ政権が実現した暁には、同国の政策が予測困難となるであろうことを前提に、ドイツと日本はその対抗策として、技術革新、気候環境保護、国際安全保障などの分野における共同戦略を展開していくために二国間関係をより一層深めていくことが考えられます。米国からの独立性強化と日独関係の一層の緊密化を、両輪で進めていくことが目標となるでしょう。

ゲアハルト・ヴィースホイ(Gerhard Wiesheu)
B. Metzler seel. Sohn & Co. AG 代表取締役
DJW 理事長
info@djw.de
http://www.djw.de
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