DJW理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ
新たな経済秩序、欧州と日本の位置づけ
国際経済・通貨秩序は現在、曲がり角を迎えています。米ドルは長きにわたり、世界金融システムの揺るぎない「基軸」でした。その基本構造が変わったわけではありません。しかし、過去数十年と比較したとき、世界経済が地域化し、政治化し、そして戦略的に競争の激しい新たな秩序へと向かいつつある兆候が確かに強まっています。
通貨の問題が立地の問題になるとき
ドイツと日本のような輸出志向の経済国家にとって、これは決して抽象的な議論ではありません。為替の変動、地政学的な緊張、そして新たな技術インフラは、すでに投資から資金調達、サプライチェーン、戦略的パートナーシップにいたるまで、企業の意思決定に直接的な影響を及ぼしています。言い換えるなら、通貨の問題はつねに立地選択の問題でもあるのです。
このような環境下で競争力を維持し、生き残っていくためには、何よりも「多角化」や「分散」が必要となります。ポートフォリオだけの話ではありません。このことは、ビジネスモデル、テクノロジー、そして国際的な関係性においても当てはまります。まさにそこに、変動が激しく、分断されながらも相互接続が進む世界で舵取りをしていくうえでの重要な答えのひとつを見出すことができるのではないでしょうか。
世界金融システムにおいて、米国が今後も中心的な役割を果たし続けるだろう蓋然性は高いと考えられる一方で、同国の経済的・政治的支配力が相対的に弱まっていくだろう可能性も示唆されています。これは一夜にして起こるような激変ではなく、長い時間をかけて生じる変化と言えます。そしてまさにこの変化により、西側諸国は今、自らの経済的な行動能力の再評価を迫られているのです。
それというのも、問題はもはや狭義の金融政策にとどまらないからです。ここで問われているのは、通貨主権であり、レジリエンスある資本市場であり、さらには地政学的な利害が経済プロセスにますます直接的な影響を及ぼすようになった時代において、欧州の経済インフラがどれほど堅牢であるかという点なのです。
このような状況において日本が注目される理由
上記のような背景のなか、日本との協力関係が一層重要性を増しています。ドイツと日本のあいだには、一瞥しただけではとらえきれないほど多くの共通点があります。たとえば、強固な産業基盤、高い技術水準、明確な輸出志向、そして目先の成果よりも長期的な視点を重視する企業責任に対する理解が挙げられます。これらの要素が重なりあうとき、単なる個別の取引を大きく超えるつながりが形成され、そしてそこから、イノベーション、レジリエンス、持続可能な成長を促進するパートナーシップが生まれるのです。
以上から導き出されるもの
今後の重要な問いは、どの通貨が強くなるか、あるいは弱くなるかということだけにはとどまりません。それよりも重要なのは、ますます不安定化する環境下で、ドイツを含む欧州と日本がいかに経済的な行動能力を組織し、発揮していくかという点にあります。
これには、ぶれることのない制度、開かれた市場、投資をうながす環境、そして技術革新を早期かつ戦略的に活用する意志が求められます。多極化する世界において、信頼できるパートナーとの協力関係は、競争上の決定的な要因となります。我々は、この機会を活かしていくべきでしょう。
