DJW 理事長 ゲアハルト・ヴィースホイ

経済の泉、スタートアップ

2016-07-17, 11:30

スタートアップは、経済の若返りの泉として、非常に重要です。それだけに、ドイツと日本がこの分野において、明らかに遅れを取り戻す必要がある状況に置かれていることには驚きを隠せません。成人人口に起業家が占める割合は、ドイツでは5.3%、日本の場合は3.8%であり、例えば、米国の13.8%を大幅に下回っています。その背景のひとつには、失敗に対する怖れが挙げられ、ドイツ国民の40%と、日本国民の55%が、これを理由に自ら事業を興すことには躊躇すると答えています。それに対し米国では、失敗に対する不安から起業は考えられないと回答した国民の割合は30%にとどまります。

心理的な側面に加え、それぞれの国における法制度も大きな役割を果たしています。ドイツスタートアップ連盟は、特に規制と役所での手続きの煩雑さが、起業への高いハードルになっていると述べています。世界銀行が発表する「ビジネス環境の現状」ランキングの「起業の容易さ」の分野において、ドイツはなんと107位となっています。役所とのやり取りに要する手間、そして会社設立にかかる時間の長さを理由に、ドイツはOECD加盟国平均から大幅に遅れを取っています。日本は同ランキングにおいて87位と、ドイツよりは上位に位置しているものの、日本のスタートアップ企業もまた、会社設立のための手続きと設立に要する時間に加え、OECD平均よりも嵩む会社設立コストに苦しんでいます。 

興味深いことに、ベンチャーキャピタルの利用可能性は、両国ではさほど起業への障害にはなっていないようです。120カ国を対象とした2015年の調査「ベンチャーキャピタルおよびおよびプライベートエクイティ投資の国別魅力度指数」において、日本とドイツはそれぞれ、第5位、第7位にランキングされています。なお新規株式公開に関しては、日本は第8位、ドイツの第17位と、両者の差が顕著になっています。

日本とドイツのスタートアップシーンは、喜ばしいことに相互にネットワーク化されており、このことは、両国が同分野で先行する国々に追いつくべく積極的に取り組んでいるという事実にプラスの材料を提供するものです。例を挙げれば、ボーフム大学付属病院の研究者たちは、麻痺患者や立ち座り、歩行に困難を覚える人々の動作を補助するロボットスーツHALを試験導入していますが、同システムを開発したのは、筑波大学発のスタートアップ企業であるサイバーダイン社です。その他にも、ドイツ 科学・イノベーションフォーラム東京(DWIH)は2008年から毎年、ドイツ企業をパートナーとして、日本の次世代の科学者たちに「ドイツ・イノベーション・アワード」を授与しています。

DJWは2016年6月17日、「独日スタートアップ」をテーマに、ベルリンにおいて創立30周年の記念シンポジウムを開催します。本年も著名な講演者をお迎えし、エキサイティングな対話が繰り広げらるだろうことと期待しています。多くの皆様にご参加いただき、DJWシンポジウムを、経験や情報交換の機会として積極的にご利用いただけましたら嬉しく存じます。 

Gerhard Wiesheu
Vorstandssprecher, Bankhaus B. Metzler seel. Sohn & Co. KGaA
Vorstandsvorsitzender, Deutsch-Japanischer Wirtschaftskreis (DJW)
info@djw.de
http://www.djw.de
Gerhard Wiesheu
Vorstandssprecher, Bankhaus B. Metzler seel. Sohn & Co. KGaA
Vorstandsvorsitzender, Deutsch-Japanischer Wirtschaftskreis (DJW)
info@djw.de
http://www.djw.de

協賛会員