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J-BIG 1月号:ビョルン・アイヒシュテットとニーナ・ブラゴイェウィッジによるインタビュー

多くの方が日々、そうとは意識せずに三菱電機の技術を使われています

DJW協賛会員Storymaker GmbHによる記事

2021-03-11, 14:23

炊飯器から人工衛星まで、三菱電機株式会社(以下:三菱 電機)ほど幅広いポートフォリオを持つ企業はそう多くありませ ん。しかし、日本では名高い電気メーカーも、ドイツでは知られていないということもしばしばあります。私たちの日常に、世界第2位の特許登録数を誇る三菱電機のソリューションがどれほどの影響を与えているのか、そして三菱電機がドイツにおけるエネルギーシフトやデジタルトランスフォーメーションにどのように参画しているのか、三菱電機ヨーロッパ・ドイツ支店のCEO、アンドレアス・ワグナー氏に伺いました。

–––– 三菱電機は事業を非常に幅広く展開しています。まずは、会社の特徴について簡単に教えてください。

アンドレアス・ワグナー氏:三菱電機は世界的にも電機業界を牽引するテクノロジー企業です。宇宙からインダストリー、モビリ ティ、インフラの領域をわたり、家電まで、幅広いソリューションポ ートフォリオを展開しています。私たちは、こういった技術を通じて、持続可能な社会と質の高い暮らし(QoL)に貢献すること を目指しています。100年前の創業時以来この考え方の下、お客様のために、そしてお客様とともに歩んできました。

これに関連して、この数年日本では「Society5.0」という言葉がよく聞かれるようになりました。このコンセプトは、デジタル化や持続可能なエネルギー利用を通して、国連が提唱する持続 可能な開発目標(SDGs)を実現しようというものでもあります。 欧州で頻繁に使われる「Electric Society」という表現も良くできています。私たちの社名だけでなく、多様なソリューションにも表れている「電機(=Electric)」の幅広さと重要性をうまく説明していると思います。

–––– 現在特に注目している変革や業界はありますか?

アンドレアス・ワグナー氏:主に、エネルギーシフト、デジタルトランスフォーメーション(DX)、スマートモビリティの3つの領域は、極めて重要です。

エネルギーシフトの領域では、従来優先されてきた化石燃料から持続可能なエネルギー源に向けた転換が行われています。それに伴って、私たちのポートフォリオの大部分を占める技術が必要とされています。例えば、エネルギー確保のためには、弊社のパワー半導体が欠かせません。エネルギー流通も然り。損失をできるだけ抑え、各家庭にエネルギーを届けるためにも、弊社の技術が使用されています。さらに、エネルギーを効率良く利用することについても考える必要があります。どのように省エネの空調システムを実現するか。建築技術にも関わる問題です。今日、新しく建設・改造される住宅やビルのほとんどには、ヒートポンプが設置されます。

DXは非常に幅広い分野にわたります。身近な日常生活の中でも、今や、デジタル化と無縁なモノは存在しないでしょう。私たちは、ドイツではむしろ産業の自動化ソリューションに焦点を当てており、IoTやAIを駆使して高い生産性や効率性、アジリティを実現しています。また、ドイツ産業と緊密に連携し、基盤プラットフォームなどを通して、存在感を高めている「エッジコンピュー ティング」にも取り組んでいます。

スマートモビリティも多角的に関与している分野です。まず、個人が移動する際の自動車産業のソリューション・プロバイダとして、電動化に力を入れています。それに加えて、高精度な衛星測位技術を提供し、自動車、運送車、産業用ドローンや農業機械などの自律運転に貢献しています。その他にも、欧州中の鉄道網や車両製造会社に対して、鉄道向けソリューションを提供しています。

–––– 日本の鉄道システムは、ドイツよりも進んでいると言われていますが、将来的には、三菱電機の技術がドイツに希望をもたらすと期待してもいいのでしょうか?

アンドレアス・ワグナー氏:ドイツにおける鉄道は開発が進み、 列車が未来の移動手段として重要になると私たちは確信しています。快適な鉄道の旅の実現に向けて、改善点は確かにあります。例えば、車両の空調管理はもちろんのこと、乗客が直接は感じるわけではないものの重要である、鉄道のエネルギー 消費なども考慮しなければいけません。ここに、私たちの技術が大きく貢献をすることができます。

ドイツで旅行をするとしばしば「求めている情報が手に入らない」という事態に直面することがあります。日本では当たり前であるリアルタイムに情報発信をするトレインビジョンも、欧州では最近まで珍しいことだったのです。弊社はこの分野にも積極的に取り組んでいます。今後数年で状況がきっと改善されていくと想定しています。

–––– 鉄道技術は、三菱電機の技術が必ずしも日常生活の見えるところで導入されているわけではないということを示す好事例ですが、同じような事例は他にもありますか?

アンドレアス・ワグナー氏:多くの方が日々、そうとは意識せずに三菱電機の技術を使われています。

例えば、朝電気を付けるとき、電力を供給したり配分したりするためのシステムに、あるいは起きてメールをチェックするときも、安定したネット回線を保つためのシステムに弊社のソリューションが組み込まれているかもしれません。また、通信・放送衛星はご存知の通りですが、私たちはデータセンターで活用される光デバイスも製造しています。データセンターの冷却も近年重要度が上がっている成長分野です。電車で仕事へ向かうときもまた、私たちのソリューションがさまざまなところで導入されています。

挙げてもきりがないくらい、現代の生活は電機で溢れています。私たちの技術が導入されている数々の分野に着目すると、「三菱電機の製品がないと、世界は静止してしまう。」と言ってしまっても過言ではないと思います。しかし、各製品は単体でソリューションとして成立しているわけではなく、全体の一部分なのです。

–––– 日本とドイツではソリューションポートフォリオに違いはありますか?

アンドレアス・ワグナー氏ごく僅かな違いです。もちろん市場によりお客様のニーズは異なりますが、全ての分野が同様に重要であると考えています。肝心なのは、お客様や市場のニーズに合わせたソリューションを提供するということです。 .

–––– 三菱電機はドイツ企業、それとも日本企業だと意識していますか?

アンドレアス・ワグナー氏:会社の歴史的なルーツは日本にあります。三菱グループは150年前に海運物流企業として創立され、そこから弊社を含む一連の三菱グループ企業が誕生しました。まさにちょうど100年前の話です。今年は100周年記念も祝う予定で、新型コロナウイルスの影響により当初計画していたスケールとは異なるものの、現在準備をしている段階です。

ドイツ支店は1978年に販売拠点として設立されました。当初の従業員数は3名。今では700名以上がドイツ支店で働いています。時間の経過とともに業務内容も大幅に変化していきました。今や私たちは日本企業の単なる販売会社や海外支社ではありません。三菱電機ヨーロッパの一部として、欧州のネットワークの中心となり密接に繋がっています。私たちは、日本で始動した歴史を持ち、ドイツや欧州に強く根付いたグローバル企業の一員であると考えています。

–––– 日独間の連携はいかがでしょうか。文化的な違いから困難に直面することはありますか?

アンドレアス・ワグナー氏私たちは日独間の緊密な連携活動をとても大切にしています。弊社では、試行錯誤を繰り返した結果、国境を超えて集められたメンバーと一緒にプロジェクトに参画するということがスタンダードになっています。

ベースには、全新入社員に対して早期から異文化研修を実行していることがあります。ドイツで働く多くの社員は、同僚と直接交流し、日本の精神風土を理解するために一定期間日本に滞在します。同様に、日本からもドイツや欧州に数年間駐在する社員を受け入れています。これは長年伝統として続いています。そのため、異文化ゆえの誤解は、弊社ではあり得ません。

–––– このような一体化が進んでいない企業や従業員に対してアドバイスはありますか?

アンドレアス・ワグナー氏私から見て一番大切なのは「聞くこ と」です。言われたことを時間かけて吸収し、態度で示し、必要に応じて再確認すること。コミュニケーションにおいて、開放性や透明性は信頼を得るための前提条件です。これは一緒に仕事をする上で基本的なことだと常々感じています。協力関係は、どんな時も信頼に基づく相互関係です。

–––– そうすると、ワグナー氏は「日本人と付き合うための10の心得」というようなガイドブックのファンではないということでしょうか?

アンドレアス・ワグナー氏:基本は、態度や姿勢のように根本的 なことです。文化の違いや特殊性に注目する必要がないという意味ではありません。これらを知ることも、異文化と丁寧に関わる上で重要なことです。しかし、私の経験では、双方の信頼と理解さえあれば、たまたま間違えてしまったことによるマイナスな影響は心配しなくてもいいことだと思います。

–––– 最後になりましたが、三菱電機にとってドイツ市場はどういう意味を持ちますか?また、他の日本企業に共通する要素はありますか?

アンドレアス・ワグナー氏: ドイツは、日本に次ぐ世界第4位の国内総生産(GDP)を誇る経済大国であり、その市場規模からしても重要度が高い国です。日本市場のようにドイツ市場も根本的な変革を遂げようとしているダイナミックな市場なのです。また、EU加盟国であることからグローバルネットワークも充実しています。エネルギーシフト、DX、スマートモビリティ。これらの領域は日独両方の社会を特徴付けており、この変革を一緒に形作っていくドイツ市場は、日本にとって大変重要な市場であると言えます。


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