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ドイツと日本 - 経済および特許法分野における国際協力の成功

寄稿:KNH特許事務所 ドイツ・欧州特許・意匠・商標弁理士マティアス・ロセラー

This article was first published in DJW News 2/2017.

2017-03-31, 10:00

ドイツと日本の国際協力

 世界有数の工業国であるドイツと日本の協力関係は長年にわたります。両国は、外交上の問題だけでなく、経済、文化、科学の分野でも国際協力を推進してきており、友好関係と協力関係を絶えることなく発展させています。

もう一つの共通点は、ドイツと日本のどちらでも、自動車・機械、医療技術、電気・化学産業において多数の国際的なハイテク企業が成功を収めていることです。さらに両国では、革新的な中小企業が強い存在感を示しています。日独間の協力活動には、Viessmann / パナソニック、BMW/トヨタ、Linde/岩谷産業、Grohe / Lixil、SAP / NECなどの例があります。

ドイツは日本にとって欧州最大の伝統的な貿易相手国です。「Made in Germany」製品は高い評価を得ています。また日本はドイツにとってアジアで最も重要な経済貿易パートナーの一つです。2016年の貿易額は403億ユーロでした(ドイツから日本への輸入:184億ユーロ、日本からドイツへの輸出:220億ユーロ)。

両国の二国間協力は、学術の分野でも促進・強化されています。例えばドイツと日本の大学および研究所では300件以上の協力協定が締結されています。

ドイツと日本における産業権保護

国際レベルでの権利の保護は、これまで以上に重要な課題となっています。特に技術集約型のグローバル企業にとって、自国の国境を越えた海外市場における特許、商標、意匠の保護は、競争優位性を長期的に保つための重要な前提となります。グローバル化は多くの機会(市場アクセス、協力関係など)を提供してくれますが、その一方でリスク(著作権侵害など)も潜んでいます。日独両国では、産業権保護は広範にわたり法律に基づき規制されています。特許は発明者または承継人に対して、独自の発明を独占的に利用する権利を与えてくれます。日本とドイツは類似した法律を持ち、例えば従業員による発明は所属する企業に譲渡されるため、特許出願のうち約80%が社内発明に由来しているという事実の基礎をなしています。このような規制は技術志向の企業にとって、製品をさらに開発・保護するための重要な要素となります。

当然のことながら、発明者と企業にとっては国内における利益が最重要であるため、多くの場合、まず国内での特許、商標、意匠の保護が求められます。しかし日本とドイツのどちらにも、特許、商標および/または意匠に関する出願を国内で申請し、後日(例えば産業財産権および/または製品が成功する見通しを慎重に検討後)同様の対象に対して、国外での保護を要求するという選択肢があります。これによって法律上不都合な点が生じることはありません。特に、最初の国内出願申請からその後国外で出願手続きを開始するまでの期間に発生した刊行物や産業財産権出願が、遅れて提出された産業財産権の審査で考慮されることはありません。

国境を越えた特許出願と取得プロセスでは、クライアントの依頼に基づき、経験豊富な特許弁理士がこれらの業務を代行します。特許または実用新案などの産業財産権については、国境を越えたその他の特許事務所とのネットワークおよびそれぞれの実践経験を集約した知識を活用し、翻訳サービス、リサーチ作業、特許戦略の策定といった課題についてもクライアントの意向に沿ってサポートします。

さらに、各国の特許庁も緊密に連携しており、2014年には多国間を結ぶパイロット・プロジェクト「GPPH」(グローバル特許審査ハイウェイ)も立ち上げられています。同パイロット・プロジェクトには、各国・地域の特許当局が参加でき、日本特許庁(JPO)およびドイツ特許商標庁(DPMA)も既に数年前より参加しています。プロジェクトの会合は特許出願手続きを互いに加速させるために、各特許庁間の取り決めを行う場所となっています。他の国々の(肯定的な)結果を考慮したり、認識したりすることにより、国境を越えた手続きをより効率的に構築することを目的としています。現在、世界22か国・地域の特許当局がGPPHに参加しています(2017年1月6日現在。オーストラリア、カナダ、フィンランド、スウェーデン、韓国、英国、米国などを含む)。

特許統計

特許統計は、国民経済の科学技術的な能力を可視化するうえで役立ちます。特許出願数は、どのぐらいの製品開発および企業開発が保護に値すると見なされるかを示すものです。そして両国の企業にとって、相手国での産業財産権は今なお卓越性の証として受け止められています。

JPOでは2015年、総計318,721件の特許と6,860件の実用新案が出願されました。同年DPMAでは、特許66,889件、実用新案14,277件が出願され、このうちの少なからぬ割合を日本からの出願が占めています。特許出願については、ドイツでの日本からの出願の割合は9.6%を占めており、前年と比較すると20.3%増加したことになります。ドイツの実用新案については、同時期と比較すると出願数が35.4%も増加しており、日本側からさらに高い関心が寄せられていることが理解できます。ドイツ国内の産業財産権に対する関心の大幅な増加の理由の一つとして、英国の最近の動向との関連を挙げることができます。欧州レベルで統一された特許の保護または励行について、どの程度英国が長期的に共同歩調を取るか不明であるという状況から、将来を見定めようとする多くの国々の企業が、ドイツなど重要な経済の中心である国の産業財産権に今まで以上に期待をかけるようになっているのではないかと言われています。

ドイツと日本には多くの接点があり、とりわけ経済的観点から、大きく発展する可能性があります。また両国間の友好関係は、多様な文化的ネットワークによっても築かれています。上述のようなネットワーク概念は、両国の特許システムにも定着しており、世界的なレベルでイノベーションの保護を展開させるうえで決定的に重要な要素であると言えます。このような背景のもと、特許弁護士および弁理士は、クライアントと特許庁との仲介者としての役割を担いながら、日本とドイツのクライアントの知的財産を最適に保護するために尽力します。

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KNH特許事務所 ドイツ
欧州特許・意匠・商標弁理士
マティアス・ロセラー
roessler@knh-patent.de
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