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German Japanese-Professional Women’s Network(GJ-PWN)

兵庫県立大学環境人間学部准教授 杉山武志

日本とドイツの働く女性たちが学びあえるコミュニティ ーー 日独交流の “もう一つの魅力” ーー

2018-12-27, 11:11

筆者がはじめてGerman Japanese-Professional Women’s Network(GJ-PWN)のことをDJW事務局から教えてもらって知ったとき、瞬時に「すごい活動がはじまるぞ」と感じたことをいまでも鮮明に覚えている。GJ-PWNの試みは、世界各地に集住する日系コミュニティとホスト社会との関わりのなかでオリジナリティのある、とても興味深い活動の一つになっていくのではないか、と。

女性の国際移動や移住した女性たちの仕事や生活をめぐっては日本においても、社会学者の酒井千絵(2003)、経済地理学者の中澤高志(2016)などの研究が進められてきている。これらの研究は、簡潔に言うと、ホスト社会に移住した日本人女性たちの状況を丹念に把握して問題点を洗い出すものとなっている。実態を把握する研究は骨の折れる仕事であり、その点に敬意をはらい、これらの文献を読み進めた。また、文献の熟読は、ホスト社会で働く女性たちの苦労、渡航先での「生活への不満足やアイデンティティの揺らぎ」(Sakai2004)という実態を、筆者自身が学ぶ機会になった。一方、文献を読み進めるなかでやや釈然としなかった点があったことも事実としてあった。確かに実態なり現状は、先行研究から理解できた。当然ながら、苦労や苦悩の実態を把握することは、議論を深めていくためにも大事なプロセスとなる。しかし、その実態をどう改善し前進させていくのか、少なくとも調べた限りの先行研究には書かれていなかった。GJ-PWNのオリジナリティが確証に変わった瞬間である。

2017年3月1日、GJ-PWNの代表を務めておられる江塚照美氏からGJ-PWNについて詳しく話を聞かせていただく機会に恵まれた。GJ-PWNは、デュッセルドルフに拠点を置いている「日独の働く女性および働きたい女性を支援するグループ」として2014年4月に発足し、DJW分科会の一つに位置づけられている。詳しくはDJW分科会のホームページにも記載されているが、GJ-PWNの基本理念は、女性のライフステージによるワーク・ライフ・バランスの比重の変動性にかんがみ、「日独の働く、働きたい女性をつなげ、互いが「学びあい」、参加者それぞれが学んだ知識や培った経験を共有し、ワーク・ライフ・バランスの向上、長期的視点から充実した生活を送ることを目指す」ものとされている。こうした基本理念のもと、日独女性の仕事継続を推進するライフキャリアにおいてのサポート、情報交換、各種テーマについて話しあう勉強会などが開催されている。より具体的には、①多様なバックグラウンドを持つ女性が集まり、幅広く経験・情報の共有、課題を話しあう「定例会」、②年次報告や活動案の協議が行われる「全体総会」、③育児や介護との両立、女性管理職、起業など、それぞれのテーマ特有の経験談・課題を共有し学びあう場である「テーマごとの集い」、④その他の女性支援グループとの交流、パートナーシップを構築する「その他の事業」がある。会員数は調査時点で約40名であり、少しずつ拡大している。

GJ-PWNの興味深い活動内容を伺い、その後に取りまとめた拙稿のなかで示した筆者なりの結論は、次の諸点であった。先行研究でも示されてきたように、国際的に移動し移住する女性たちが抱えている仕事や生活上での課題や悩みは多岐にわたり、ときに克服にあたって困難を伴うケースも事実として散見される。ただ、GJ-PWNには、ここから先の「学び」があった。すなわち、ホスト社会での再就職や子育て後の仕事探しの難しさそのものに問題関心をもち、少しでもよりよい環境へ変化させていきたいとのポジティブな感情のなか参加者が集っている点である。そして、メンバーや社会が抱える課題を、単に課題としておくのではなく、得意分野を相互に学びあいながらネットワークを拡大させていこうと試みていることは特筆に値しよう。さらに、日本だけ、ドイツだけと限定するのではなく、日独の女性たちが互いに交流している点も注目される必要がある。課題を共有しあいながらお互いが助けあい、学びあえる環境は、日独双方の女性の仕事と生活の問題を好転させていくきっかけとして重要な場と捉えられる(杉山2018)。もちろん学術界としても、GJ-PWNのような取り組みを考察していくことは今後、さらに必要になってくる。

そのうえで大事なことは、GJ-PWNのような女性たちによる学びあえる環境が、日独間交流のなかで存在していることにある。特に、日独両国間の経済、ビジネスの活性化を目的に活動を進めているDJWの分科会の一つとして活動している点に意義があるといえる。周知の通り、ドイツへの日本企業の進出は、ヨーロッパ全体のなかで堅調なものとなっている。その堅調さには様々な要因があろうが、経済的な要素だけでなく、GJ-PWNとGJ-PWNを支えるDJWなど社会、文化、生活といった様々な分野を横断しうる支援組織とコミュニティの存在にこそあると、筆者は思う。他所ではあまり見受けられない、オリジナリティに溢れるGJ-PWNの努力と前進は、DJWなど経済ファクターともかかわる日独間交流の“もう一つの魅力”といってよかろう。

謝辞

快く調査にご協力くださったGJ-PWNおよびDJWの皆様に、改めてお礼申し上げます。

 

参考文献

  • 酒井千絵(2003)香港における日本人女性の自発的な長期滞在――長期滞在者からみた「香港就職ブーム」. 岩崎信彦・ピーチ, C. ・宮島喬・グッドマン, R. ・油井清光編: 『海外における日本人,日本のなかの外国人――グローバルな移民流動とエスノスケープ』昭和堂, pp.239-253.
  • 杉山武志(2018)グローバル中間層の女性のワーク・ライフ・バランスをめぐる「学びあい」――“German Japanese-Professional Women’s Network”の取り組み.兵庫地理63, pp.89-98
  • 中澤高志(2016)グローバル中間層の国際移動と日本人の海外就職. 明治大学教養論集512, pp.67-95.
  • Sakai, J. (2004)The clash of economic culture: Japanese bankers in the City of London. Transaction Publishers, New Brunswick. 
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Takeshi Sugiyama
Associate Professor, University of Hyogo
sgymt01@yahoo.co.jp
www.u-hyogo.ac.jp/shse/koho
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